鼈甲細工の歴史は大変古く 正倉院宝物の中に杖や琵琶の一部分に 玳瑁の甲羅が使われていることからも明らかです。
江戸鼈甲が作られたのは江戸幕府が開設された頃といわれ 当時は 甲羅をそのまま使うなど細工も簡単でした。
元禄期(1688−1704)に貼り合わせの技法が江戸に伝えられ 複雑な造形ができるようになりました。
江戸鼈甲の材料は、数多い亀のうちでも 特に甲羅の質が装身具や置物の材料として
利用できる玳瑁の甲羅を使います。 玳瑁は、赤道近くの海域に生息し 大きいものは、50−60才で全長180センチメートル
体重200キログラムにもなります。 また 亀の背中の甲羅はかならず13枚で 黒くなっている部分を斑(ふ)といいますが
斑以外の透明な部分は約10%しかなく、特に珍重されています。
国際的に絶滅の恐れのある動植物の保護が叫ばれており 良質な天然鼈甲の確保が懸念されていますが
今日では 赤道近くのインドネシアやキューバでの人工増殖が行われており その成果が期待されています。
製品はまず甲羅からの木地取り、 製品の形と斑の位置を先に決めて、 同じ物を2-3枚水と熱で張り合わせます。
この時の湿し方と温度と圧力の加減で張り合わせの良否が決まるといわれ 長年の年季と熟練がものをいうところです。
最後にやすりと木賊(とくさ)で磨き上げていきます。
ネックレス、ブローチや眼鏡の枠など 天然の鼈甲製装飾品には、 奥行の深い光沢と肌触りがあり多くの人に愛用されています。 |