簾の歴史は古く、万葉集の中にも登場しています。 額田王が近江天皇(天智天皇)を想いて作る歌
「君待つと、吾が恋ひをれば、わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く」や、 清少納言が唐の詩人白居易の「香炉峰雪撥簾看」(香炉峰の雪は簾を撥げて看る)
の七言律詩にちなみ、御簾を高くあげた話はよく知られています。 また、簾に縁をつけた高級なものは「御簾」とも呼ばれ、
平安時代から宮廷や貴族の屋敷、神社、仏閣などで、 部屋の間仕切りや日よけに用いられてきました。
江戸簾は、浮世絵の黄金期の代表的絵師、喜多川歌麿(1753−1806)の作品である
「百科園涼み」「簾ごし美人図」「風俗三段娘」などにもすだれがしばしば登場しています。
江戸簾の特色は、竹、萩、御業、蒲、よし、などの 天然素材の味わいをそのまま生かしているところにあります。
最も多く利用されている竹は、 肉質が固くしまっていて色艶が良い秋の彼岸から
春の彼岸までの間に採取します。
竹の加工は、材木のように鋸で切るのではなく、 目に合わせて細かく割ったり、薄くへいだりするため、
幅や長さを一定にするのがなかなか難しいものです。 また用途によっては、竹の裏を三角に削ったり、
かまぼこ形にしたり、反らないように柾割にするなど特殊な割りかたもあります。
このように一見単純そうにみえる竹割りにも、 その性質を十分に知り抜いた長い経験と高度な技術が必要です。 |